注目の先生

松井伸佳

Nobuyoshi Mathuia

写真よりも本物らしい表現、スーパーリアル・イラストレーションで、広告や、パッケージデザインの世界で活躍する松井先生。

「本物より本物らしく、風景の中の空気の温度まで表現したいと思っています。」

スーパーリアル・イラストレーション

リアルイラストレーションは見たままを表現することではありません。立体感や質感を強調して、人が持っているそのモノのイメージに近づけてやることです。ちょうど写真の撮影で、ライトをどこから当てるか、カメラのアングルはどうするかを考えるのと同じようなことです。ただ写真と違うのは写真では理想のモノ、例えばレモンを描くとすれば理想の形や質感、熟し具合のレモンがカメラの前に無ければ撮影できませんが、イラストレーションでは、理想のレモンは私の頭の中や、私の資料棚に整理されて保管されています。

理想のレモンを引き出して、後は目的に合わせて、ハイライトを強調したり、質感がより強く感じられるように、少しデフォルメをしたり、冷たい感じを出すのであれば、水滴をつけてやったりします。

水滴にも温度によって大きさに違いがあるのを知っていますか?温度が低ければ粒が小さくなり、高くなると大きくなります。ですから何度の温度のレモンを描くかで、水滴の大きさも描き分けなければなりません。

昨年九月に銀座アートスペースで行った作品展では日本的なモチーフをリアルに描きたいと考え、「日本的な季節」や、「何気ない、さりげない時間」といったイメージを作品の中で表現する試みをしました。

風景でも、より写真より本物らしく見える風景を描いてみました。川のイメージ、雪のイメージ、春、夏、秋、冬のイメージをうまく拾い出して風景の中に再現してみました。

水面に映りこむ様子、冷たい質感など絵の中に季節はもちろん、気温まで描きこんだつもりです。

色にもこだわりました。緑と一言で言いますが、芽生えの頃、新緑、真夏の山、全て色が違います。青空でもそうです。東京の青空と沖縄の青空は、言葉では同じ青空ですが、青の深みが全くと言ってよいほど違います。こうしたことに拘って描いています。

描く上で必要なのは、好奇心を持って観察すること。家から学校までの往復でも、日ごとに春めいたり、秋が深まったりする様子が観察できます。

さらに先達たちの作品から学ぶことも重要です。優れた作品の原画を見て、色の塗り方、筆の運び方、これらは印刷された画集からは見ることが出来ません。

花・三連作中の1点

やりがい

やりがいは、自分で見ても本物らしく描けた時はもちろんですが、僕を選んで発注してくれた期待にこたえたいですから、デザイナーが「考えていた以上に良く仕上げてくれた。」と言ってくれた時や、言葉には出さないですけれど、ニンマリ微笑んで受け取ってくれた時など、その表情が手ごたえとして伝わってきた時はうれしいですね。